更新日:2022/2/5
公衆衛生学(M4)解答例集
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考査後発表された解答例です。廣田先生担当分のみです。
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作成日 2001年 1月 22日 (月)
考査日 2001.1.15
- Cohort studyとCase-control studyのデザイン上の差異を説明しなさい。
- 【解答例1】
- Cohort studyは,暴露を受けた群と受けていない群がこの先疾病にかかるかどうかを追跡調査して比較研究するものである。Case-control
studyは,現在疾病を有する群と有さない群が以前因子に暴露したかどうかを過去にさかのぼって調査し比較研究するものである。
- 【解答例2】
- コホート研究は,まず要因を有する人と有しない人に分けてその人たちのその後の疾患への罹患について比較するものだが,Case-control studyはまず症例群と適切に選択された対照群を選び,その間の罹患する以前の要因の有無を比較する。
- 断面(横断)研究の短所について記述しなさい。
- 【解答例】
- 横断研究は記述疫学の1つで,1回の調査で断面的に調べるので,要因と結果を入れ違えて認識してしまう可能性がある。
- 交絡因子(Confounding factor)とは何か,記述しなさい。
- 【解答例1】
- 喫煙者にはアルコール常用者が多いため,本当は喫煙により発癌が生じても,アルコールと肺癌との間に見かけ上の相関が見られる。喫煙の有無により分割して分析すればアルコールが発癌に影響しないことがわかるが,分析疫学において陥りやすいワナである。喫煙がこの場合の交絡因子である。
- 【解答例2】
- 例えば喫煙は肺癌の危険因子であるが,飲酒はどうかということを検討する際に,飲酒する人はよくたばこを吸うという事実のために,飲酒と肺癌発生との間に飲酒単独では見られないような関連が生じてしまう。このときの喫煙のように,調べたい要因(飲酒)との関連が強いために,結果に本来はない関連(交絡)を作ってしまう要因(喫煙)を交絡因子という。
- 肺癌の記述疫学研究で「生存率が高くなったのに,死亡率は低下しない」 という結果を得た。この結果を解釈しなさい。
- 【解答例1】
- まず生存率では分母に患者をとり,死亡率では分母に一般人口を用いているので,生存率と死亡率は全く異なる概念であることに注意する。よってこの結果は,癌検診におけるlead-time
bias(早く発見した期間の偏り),length bias(進行のゆっくりしたものほど見つけやすい)やover-diagnosis bias(早期発見した前臨床病変が全て発症,進行するとは限らない)によって,患者の中の生存者数(生存率)は上昇しているが,死亡率という点から見れば結局同じ数だけ死亡していて,早期発見はできたが治療は成功しなかったと言える。
- 【解答例2】
- 生存率の分母は癌患者であり,死亡率の分母は一般人口である。従って生存率が上がっても癌患者自体が増加した場合,死亡率の低下にはつながらない。
- 【解答例3】
- 生存率の分母は肺癌患者であり,死亡率の分母は全人口である。よって医療が進み肺癌患者の死亡率が減っても,喫煙などにより一般人の肺癌になる人が増加すれば,生存率は高くなり,死亡率は低下しない。
- インフルエンザワクチン研究で考慮せねばならない"Negative feedback" とは何か,説明しなさい。
- 【解答例】
- ウイルス感染の証明にはペア血清を用いる。つまり回復期に抗体価が4倍以上になることでウイルス感染を証明できる。しかし,ワクチン接種により抗体価が上昇するため,感染しても4倍以上にならず,感染が証明できなくなる。これをNegative
feedbackと呼ぶ。これによりワクチンの過大評価をしてしまうおそれがある。
- 「発病に対するワクチン有効率70%」とはどのような意味か,説明しなさい。
- 【解答例】
- 非接種者の発病率を1としたときの接種者の発病率が0.3であった場合である。つまり,非接種者で発病した人のうち70%は,接種していれば発病しなかったということである。
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