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更新日:2022/2/5

薬理学実習(中枢)レポート

★作成時点での情報・記事であり,最新の情報ではありません。

【実験目的】

中枢神経系作用薬(抗精神病薬,抗不安薬,睡眠薬,麻薬性鎮痛薬)の効力を行動薬理学的手法により解析し,その作用機序について考察する。

【実験方法】

  1. 4匹のマウスを透明観察箱に入れ,マジックインキで区別できるように目印を付ける。
  2. 薬剤を次の濃度になるように生理食塩水で希釈する。ただし,マウスの体重は30gであると仮定し,ペントバルビタールは水で希釈する。

    1)chlorpromazine 5mg/kg
    2)reserpine 10mg/kg
    3)diazepam 2mg/kg
    4)pentobarbital 50mg/kg
    5)morphine 20mg/kg
    6)pargyline 75mg/kg投与45分後にchlorpromazine 5mg/kg
    7)pargyline 75mg/kg投与45分後にreserpine 10mg/kg

  3. 注射器を用いて3匹のマウスの腹腔内に薬物0.3mlを投与する。1匹のマウスは対照として,生理食塩水0.3mlを投与する。
  4. 薬剤投与後10,30,60,90,120分後にマウスの行動を観察する。

【実験結果・考察】

行動観察表は別紙を参照のこと。

1.薬物がマウスの行動に与えた影響の特徴と経時的変化

私の担当した3)diazepam 2mg/kgと6)pargyline 75mg/kg投与45分後にchlorpromazine 5mg/kgについて考察する。

3)diazepam 2mg/kg

観察されたことは,
・鎮静作用,運動性の低下,筋力低下,眼瞼下垂がみられる。
・作用時間が短い。すなわち,効果がなくなるのも早かった。
の2点で,抑制効果のみみられた。

6)pargyline 75mg/kg投与45分後にchlorpromazine 5mg/kg

観察されたことは,
・鎮静作用,運動性の低下,運動失調,四肢の緊張低下,耳介・疼痛反射喪失
・作用時間が長く,実験終了時まで効果が持続し続けた。
の2点で,抑制効果のみみられた。

2.major tranquilizer,minor tranquilizer,睡眠薬,鎮痛薬の作用の特徴

1)major tranquilizer(強力精神安定薬)→抗精神病薬

代表的な薬物:フェノチアジン誘導体
作用機序:ドパミンD2受容体遮断
作用の特徴:鎮静作用,カタレプシー,体温下降

2)minor tranquilizer(穏和精神安定薬)→抗不安薬

代表的な薬物:ベンゾジアゼピン誘導体
作用機序:GABAA受容体の機能亢進
作用の特徴:抗不安作用,催眠作用,筋弛緩作用,自発運動抑制

3)睡眠薬(催眠薬)

代表的な薬物:バルビツール酸系,ベンゾジアゼピン系
作用機序:GABAA受容体-Cl-チャネル複合体に結合し,抑制性神経機能を亢進
作用の特徴:鎮静・抗不安作用,催眠作用

4)鎮痛薬

代表的な薬物:麻薬性鎮痛薬
作用機序:オピオイドμ受容体との結合により痛覚閾値の上昇
作用の特徴:鎮痛・鎮静作用,呼吸抑制

3.脳内アミン代謝におけるreserpine,chlorpromazineの作用機序

1)パージリン

パージリンはMAO阻害薬であり,ドパミンを分解するモノアミンオキシダーゼを阻害する。

2)レセルピン

レセルピンは,ドパミンが貯蔵顆粒に取り込まれるのを阻害し,神経終末に遊離させる。パージリンの存在下では,遊離したドパミンはMAO(モノアミンオキシダーゼ)によって分解されないので,神経終末内のドパミン濃度が増加する。

レセルピンとパージリンとの投与では,レセルピンがドパミンの再取り込みを阻害し,パージリンがMAOを阻害するため,神経終末内にとどまるドパミンが増え,レセルピンの作用時間が延長している。

3)クロルプロマジン

クロルプロマジンは,ドパミンD2受容体を遮断する。パージリンの存在下では,神経終末に遊離したドパミンはドパミンD2受容体に結合できなくなり,ドパミンによる神経伝達が阻害される。

クロルプロマジンの単独投与とパージリンとの投与では,予想通りその作用の差は少なかった。パージリンはMAO阻害薬であるため,ドパミンD2受容体を遮断すると,ドパミンの量に関わらずドパミンによる神経伝達が阻害されるためである。


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