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更新日:2022/2/5

薬理学実習(循環)レポート

★作成時点での情報・記事であり,最新の情報ではありません。

【実験目的】

自律神経刺激薬を全身投与または局所投与した際の全身循環動態・末梢循環動態の変化を観察し,各受容体拮抗薬や自律神経系に作用する他の薬物がこれらの変化にどのように影響するかを考える。

【実験方法】

  1. ペントバルビタールで麻酔したイヌを用いて,実験の準備を行う。

    ○全身循環

    全身血圧および心拍数は,大腿動脈より大動脈内に挿入したカテーテルを利用し経時的に測定する。心拍出量は,大腿静脈より肺動脈内に挿入したスワンガンツカテーテルを用い,熱希釈法により測定する。

    ○末梢循環

    全身血圧および心拍数は,全身循環と同様の方法で経時的に測定する。大腿動脈および腎動脈に電磁流量計のプローブを装着し,それぞれの血流量を測定する。

  2. 次の濃度の薬物を調製する。

    ●ノルエピネフリン(NE) 0.5µg/kg/min
    ●エピネフリン(E) 0.5µg/kg/min
    ●ブナゾシン(α1遮断薬) 0.1mg/kg + 0.1mg/kg/hr
    ●プロプラノロール(β1/β2遮断薬) 0.5mg/kg + 0.5mg/kg/hr

  3. 次の順番に薬物を投与する。NEとEは5分注入する。
    NE→E→ブナゾシン→NE→E→プロプラノロール→NE→E

【実験結果】

○全身循環

(コントロール)

    ノルエピネフリン エピネフリン
    投与前 投与後 投与前 投与後
BP(mmHg)     132 155 132 167
%     100 117.4 100 126.5
HR(beat/min)     136 118 143 150
%     100 86.8 100 104.9
CO(l/min)     2.31 2.12 2.53 4.87
%     100 91.8 100 192.5
TPR     57.1 73.1 52.2 34.3
%     100 128.1 100 65.7

(ブナゾシン)

  拮抗薬 ノルエピネフリン エピネフリン
投与前 投与後 投与前 投与後 投与前 投与後
BP(mmHg) 124 120 120 114 104 75
% 100 96.8 100 95.0 100 72.1
HR(beat/min) 184 184 184 179 188 212
% 100 100 100 97.3 100 112.8
CO(l/min) 3.38 2.85 2.85 2.77 2.68 3.55
% 100 84.3 100 97.8 100 132.5
TPR 36.7 42.1 42.1 41.2 38.8 21.1
% 100 114.7 100 97.9 100 54.4

(プロプラノロール)

  拮抗薬 ノルエピネフリン エピネフリン
投与前 投与後 投与前 投与後 投与前 投与後
BP(mmHg) 105 102 102 111 105 125
% 100 97.1 100 108.8 100 119.0
HR(beat/min) 183 135 135 120 120 96
% 100 73.8 100 88.9 100 80.0
CO(l/min) 2.66 2.18 2.18 2.20 2.35 1.74
% 100 82.0 100 100.5 100 74.0
TPR 39.5 46.8 46.8 50.5 44.7 71.8
% 100 118.5 100 107.9 100 160.5

○末梢循環

(コントロール)

    ノルエピネフリン エピネフリン
        投与前 投与中 変化量 % 投与前 投与中 変化量 %
収縮期血圧
(mmHg)
        128 165 +37 +28.9 125 194 +69 +55.2
平均血圧
(mmHg)
        98 128 +30 +30.6 96 158 +62 +64.5
心拍数
(beat/min)
        122 80 +42 +34.4 97 156 +59 +60.8
腎動脈血流量
(ml/min)
        78 91 +13 +16.7 83 90 +7 +8.4
腎血管抵抗         1.26 1.41 +0.15 +11.9 1.16 1.68 +0.52 +44.8
大腿動脈血流量
(ml/min)
        62 50 -12 -19.4 60 60 0 0
大腿血管抵抗         1.58 2.56 +0.98 +62.0 1.6 2.63 +1.03 +64.4

(ブナゾシン)

  拮抗薬 ノルエピネフリン エピネフリン
投与前 投与中 変化量 % 投与前 投与中 変化量 % 投与前 投与中 変化量 %
収縮期血圧
(mmHg)
127 107 -20 -15.7 98 106 +8 +8.2 107 117 +10 +9.3
平均血圧
(mmHg)
97 85 -12 -12.4 81 86 +5 +6.2 85 89 +4 +4.7
心拍数
(beat/min)
120 143 +23 +19.2 139 121 -18 -13.0 143 113 -30 -21.0
腎動脈血流量
(ml/min)
70 70 0 0 63 76 +16 +25.4 70 70 0 0
腎血管抵抗 1.39 1.22 -0.17 -12.2 1.29 1.09 -0.20 -15.5 1.22 1.27 +0.05 +4.1
大腿動脈血流量
(ml/min)
56 64 +8 +14.3 36 38 +2 +5.6 64 60 -4 -6.25
大腿血管抵抗 1.73 1.33 -0.40 -23.1 2.25 2.26 +0.01 +0.4 1.33 1.48 +0.15 +11.3

(プロプラノロール)

  拮抗薬 ノルエピネフリン エピネフリン
投与前 投与中 変化量 % 投与前 投与中 変化量 % 投与前 投与中 変化量 %
収縮期血圧
(mmHg)
96 91 -5 -5.2 93 98 +5 +5.4 91 112 +21 +23.1
平均血圧
(mmHg)
80 75 -5 -6.3 77 81 +4 +5.2 75 93 +18 +24.0
心拍数
(beat/min)
131 104 -27 -20.6 100 91 -9 -9.0 104 80 -24 -23.1
腎動脈血流量
(ml/min)
52 59 +7 +13.5 57 70 +13 +22.8 59 78 +19 +32.2
腎血管抵抗 1.54 1.27 -0.27 -17.5 1.35 1.16 -0.18 -13.3 1.27 1.19 -0.08 -6.3
大腿動脈血流量
(ml/min)
43 40 -3 -7.0 43 36 -7 -16.3 40 16 -24 -60.0
大腿血管抵抗 1.86 1.88 +0.02 +1.1 1.79 2.25 +0.46 +25.7 1.88 5.81 +3.93 +209.0

【考察】

1.それぞれの自律神経刺激薬の作用部位と作用した結果

(予想される結果)

  ノルエピネフリン(NE) エピネフリン(E)
受容体 α1,α2,β1 α1,α2,β1,β2
作用 ・血管収縮(α1作用)
・平均血圧↑
・末梢血管抵抗↑
・心拍数↓(減圧反射)
・皮膚,粘膜血管収縮(α1作用)
・骨格筋,内臓血管拡張(β2作用)
・末梢血管抵抗↓
・心拍数,心拍出量↑(β1作用)

○全身循環

実験結果からノルエピネフリンは,α1作用によって血管収縮を起こし,末梢血管抵抗と血圧が上昇していることがわかる。また,心拍数は減圧反射によって減少しているのが認められる。

エピネフリンは,α1作用よりもβ2作用のほうが強く影響して,末梢血管抵抗は大幅に減少している。心拍数にあまり変化はみられなかったが,β1作用によって心拍出量が大幅に増加しているため,血圧が増加していることがわかる。

○末梢循環

ノルエピネフリンによって血圧が上昇し,心拍数が減少しているのがみられる。末梢血管抵抗の増加の大部分は,大腿動脈の収縮によるものであることがわかる。

エピネフリンは,血圧,心拍数,末梢血管抵抗のいずれをも大幅に上昇させているが,大腿動脈の血管抵抗の増加が腎動脈の血管抵抗の増加よりも大きい。β2作用によって腎血管収縮が抑えられていることが予想される。

2.α1遮断薬(ブナゾシン)の効果

α1遮断薬は,α1受容体の遮断によって血管平滑筋の収縮を抑制する。その結果血圧は持続的に降下することが予想される。

○全身循環

ノルエピネフリンによって血圧,心拍数,心拍出量,末梢血管抵抗のいずれも減少している。α1受容体の遮断によってα2作用とβ1作用が現れてくると思われるが,どちらの作用も特にみられなかった。

エピネフリンによって心拍数,心拍出量が増加しているが,末梢血管抵抗と血圧は減少している。α1受容体の遮断によってα1作用による血管平滑筋の収縮が抑制され,末梢血管抵抗が減少し,β2作用による心拍数,心拍出量の増加がみられた。

○末梢循環

ノルエピネフリンは,血圧をわずかに上げ,心拍数を減少させている。腎血管抵抗が減少することによって腎血流量が増加している。このときノルエピネフリンの昇圧反応はほとんど抑制されている。

エピネフリンは,血圧をわずかに上げ,心拍数を減少させている。大腿動脈の血管抵抗が上昇しているのがみられる。このときもエピネフリンによる昇圧反応はほとんど抑制されている。

3.β作用薬(NEとE)とβ遮断薬(プロプラノロール)について

プロプラノロールは,β受容体刺激作用を持たないβ遮断薬で,β1,β2受容体の両方を遮断する。β遮断作用は交感神経が緊張しているときに強く現れる。β1受容体遮断作用により心拍数,心収縮力,心拍出量は減少する。β2受容体遮断作用により気管支平滑筋の弛緩が抑制されるため,気管支喘息の患者へのプロプラノロールの適用は禁忌である。

ノルエピネフリンは,β1受容体にのみに作用し,エピネフリンは,β1,β2受容体の両方に作用する。β1作用により心拍数,心拍出量を増加させる作用がある。エピネフリンにはβ2作用によって気管支平滑筋の弛緩を引き起こす。

4.無刺激状態における各遮断薬の効果と受容体の役割

○ブナゾシン(α1遮断薬)

・全身循環においては,心拍出量を減少させ,末梢血管抵抗を増加させている。

・末梢循環においては,血管抵抗と血圧を減少させ,心拍数を増加させている。

ブナゾシンは,α1受容体を遮断することによって血管平滑筋の収縮を抑制するため,血管抵抗は減少し,その結果血圧を下げる。従ってα1受容体は,循環系において血管収縮を起こす作用を持っている。

○プロプラノロール(β1/β2遮断薬)

・全身循環においては,心拍数,心拍出量を減少させている。

・末梢循環においては,心拍数,腎血管抵抗を減少させている。

プロプラノロールは,β1/β2受容体を遮断することによって心機能亢進と気管支平滑筋の弛緩を抑制する。従ってβ1受容体は循環系において心機能亢進(心拍数,心拍出量の増大)を起こし,β2受容体は気管支平滑筋の弛緩を起こす作用を持っている。


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