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更新日:2022/2/4

医動物学実習レポート

★作成時点での情報・記事であり,最新の情報ではありません。

目次

  1. 赤痢アメーバ
  2. 鞭毛虫類・マラリア原虫
  3. トキソプラズマ
  4. 回虫
  5. 蟯虫・鉤虫・鞭虫
  6. 吸虫類
  7. 条虫類

第1回 赤痢アメーバ

  1. 赤痢アメーバの学名:Entamoeba histolytica
  2. 人への感染経路と感染源となる型
    有形便に含まれる嚢子型の赤痢アメーバを経口摂取することにより感染する。栄養型を経口摂取しても感染しない。
  3. 赤痢アメーバと大腸アメーバとの鑑別点
    種類 鑑別点 赤痢アメーバ 大腸アメーバ
    栄養型 運動 活発 不活発
    赤血球捕食の有無 あり なし
    外質の発育 よい 劣る
    カリオソームの位置 核の中心 中心から外れる
    病原性 あり なし
    嚢子型 嚢子内の核の数 4個 8個
    大きさ 12-15um 15-25um
    類染色質体の形 棍棒ないし楕円形 両端尖り裂片状
  4. amebic dysentery(アメーバ性赤痢)とshigellosis(細菌性赤痢)との主な鑑別点
    鑑別点 アメーバ性赤痢 細菌性赤痢
    発病の仕方 多くの場合,緩徐に発熱 急激に発熱
    発熱の状態 平熱のことが多い 発熱する
    全身状態 比較的侵されない 侵される
    テネスムス 比較的弱い 強い
    便の量・性状 量は多く,苺ゼリー状
    魚の腸の腐敗臭あり
    量はあまり多くなく,粘液や膿状物に
    新鮮血が線状・点状に付着
    精液臭あり
    治療剤に対する反応 抗生剤では根治しない 抗生剤は有効であるが,抗原虫剤は効かない。
  5. metastatic amebiasisの起こる部位
    大腸の潰瘍で増殖した栄養型虫体は,門脈を通って肝臓に最も転移しやすいが,肺・脳・脾臓・肛門周囲の皮膚にも転移する。
  6. 赤痢アメーバ以外の人に寄生するアメーバの種類とその病原性
    アメーバの種類 病原性(あり:○,なし:×)
    大腸アメーバ ×
    歯肉アメーバ ×
    ハルマトンアメーバ ×
    小形アメーバ ×
    ヨードアメーバ ×

第2回 鞭毛虫類・マラリア原虫

■腟トリコモナス

  1. 分類学上の位置: 肉様鞭毛虫門 鞭毛虫亜門 動物鞭毛虫綱 トリコモナス目
    学名:Trichomonas vaginalis
  2. 膣トリコモナスのcyst型の有無:なし
  3. 感染様式:性交によって栄養型が直接移行する。
  4. 膣トリコモナス以外で人に感染するトリコモナス類
    種類 寄生部位
    口腔トリコモナス 口腔
    腸トリコモナス 大腸特に盲腸

■ランブル鞭毛虫

  1. 分類学上の位置:肉様鞭毛虫門 鞭毛虫亜門 動物鞭毛虫綱 ジプロモナス目
    学名:Giardia lamblia
  2. 寄生部位:栄養型は人の十二指腸,空腸上部,ときに胆嚢や胆管などの粘膜上に寄生する。
  3. 病原性:ジアルジア症を起こす。種々の下痢が主症状で,腹痛・鼓腸・食欲不振・胆嚢炎様症状・肝機能異常などを示すことも多い。
  4. 感染型と感染経路:嚢子を経口摂取することにより感染する。

■トリパノソーマ・リーシュマニア

  1. 生活史と出現型
    種類 生活史と出現型
    ガンビア
    トリパノソーマ
    ヒト体内
    2分裂で増殖
    (錐鞭毛期)
    吸血
    ────→
    ←────
    吸血
    ツェツェバエ体内
    発育・増殖
    (上鞭毛期→
    発育終末トリパノソーマ型)
    クルーズ
    トリパノソーマ
    ヒト体内
    血中−分裂・増殖しない
    (錐鞭毛期)
    筋・肝・脾・心などの細胞内−
    2分裂で増殖
    (無鞭毛期)
    吸血
    ────→
    ←────
    糞からヒトへ
    サシガメ体内
    発育
    (上鞭毛期→
    発育終末トリパノソーマ型)
    リーシュマニア
    ヒト体内
    肝・脾などの細網内皮系細胞
    特にマクロファージ内に寄生し,
    分裂・増殖する
    (無鞭毛期)
    吸血
    ────→
    ←────
    吸血
    サシチョウバエ体内
    中腸内で増殖
    (前鞭毛期)
  2. 疾病の特色
    ガンビアトリパノソーマ
    アフリカ睡眠病−経過は比較的慢性,中枢神経が侵されると予後不良で,頭痛・意識混濁・嗜眠・貧血などを起こし,全身衰弱で死亡する。
    クルーズトリパノソーマ
    シャーガス病−1〜2週間の潜伏期を経て発病する。
    急性期症状は普通小児でみられ,高熱・発疹・リンパ節炎・肝脾腫大・片側性の眼瞼浮腫(Romana徴候)・心筋炎・髄膜脳炎などを起こし,2〜4週 間で死亡することもある。
    成人は初めから慢性期となることが多い。主症状は心筋炎・心肥大・巨大結腸などである。
    リーシュマニア
    カラ・アザール−約3ヶ月の潜伏期の後,高熱で始まり,肝脾腫・貧血が起こり,放置すると死亡する。
    東洋瘤腫−顔に結節や潰瘍を生じる。
    espundia−顔面では皮膚から粘膜への組織欠損に至る。

■マラリア

  1. 三日熱マラリアの生活史
    ヒト体内 蚊の体内
    マラリアに感染 吸血
    ←──
    スポロゾイトが
    蚊の唾液腺に集まる
    スポロゾイトが
    直ちに肝細胞に侵入
    オーシスト内で
    スポロゾイト形成
    一部は分裂体となる
    他はヒプノゾイトとなり休眠
    虫様体は虫腸壁に侵入し
    オーシスト形成
    分裂体はメロゾイトを生じ
    肝細胞を破壊して現れる
    雄性・雌性生殖体は
    合体受精し,融合体になる
    赤血球に侵入 中腸内で成熟
    ↓↑
    輪状体・アメーバ体となり
    分裂体はメロゾイトを生じる
    ──→
    吸血
    雄性・雌性生殖母体
  2. マラリア4種の形態的特徴
    種類 特徴
    三日熱マラリア 感染赤血球は大きくなる(全て)
    シュフナー斑点がある(アメーバ体)
    熱帯熱マラリア 1つの赤血球に2〜3の虫体が侵入(輪状体)
    時に2つのクロマチン顆粒を持ち,赤血球の辺縁に位置することが多い
    モーラー斑点がある(アメーバ体)
    生殖母体は半月状の半月体と呼ばれる(生殖母体)
    四日熱マラリア しばしば帯状を示す(アメーバ体)
    膨大せず,時にチーマン斑点がみられる(全て)
    卵形マラリア 感染赤血球は卵形(輪状体)
    一端は鋸歯状(アメーバ体)
    シュフナー斑点がみられる(全て)
  3. マラリア撲滅のためになされるべきこと
    • マラリアを媒介する蚊の発生を抑える
      殺虫剤の使用,水たまりを埋めるなど
    • 蚊に刺されないようにする
      睡眠時には必ず蚊帳を使用する

第3回 トキソプラズマ

  1. 学名と分類上の位置
    学名:Toxoplasma gondii
    分類:アピコンプレックス門 胞子虫綱 真コクシジウム目 肉胞子虫科
  2. 終宿主:ネコ科の動物
    成熟オーシスト・嚢子により感染
    スポロゾイトが遊離して、小腸粘膜細胞に侵入
    急増虫体となり増殖
    (スポロゾイト→分裂体→メロゾイト)
    一部のものは有性生殖
    (雌性・雄性生殖母体→
    雌性・有性生殖体→
    受精により融合体)
    終宿主の筋肉・脳に移動した
    ものは嚢子を形成する
    糞便中に未熟オーシストを排出 嚢子内で緩増虫体が増殖
    外界で発育して
    成熟オーシストになる
    他の個体に感染
  3. ヒトへの感染経路
    • 実験中の事故などで多量の急増虫体が眼・鼻・傷口などに接触する。
    • 嚢子に汚染されたブタやヒツジの肉を生で食べる。
    • ネコの糞便中のオーシストを経口摂取する。
    • 妊婦がトキソプラズマに初感染すると、急増虫体が胎児に移行する(虫血症)。
  4. 増殖方法には次の2つがある。
    • 急増虫体による急激な増殖
    • 緩増虫体による緩徐な増殖
  5. 症状
    • 先天性トキソプラズマ症
      4大徴候
      • 網脈絡膜炎
      • 水頭症
      • 脳内石灰化像
      • 精神・運動障害
      その他、全身症状として発熱・リンパ節腫脹・黄疸・貧血・肝脾腫大・リコールの変化などがみられる。
    • 後天性トキソプラズマ症
      ほとんどの場合無症状に経過するが、免疫能が低下するとリンパ節炎・発熱・網脈絡膜炎などの症状を発する。AIDS患者ではトキソプラズマ脳炎を 併発しやすい。

第4回 回虫

  1. 学名:Ascaris lumbricoides
  2. 感染性を持つ虫卵は、幼虫保有卵である。
  3. ・体内移行経路
    幼虫保有卵を経口摂取
    小腸で孵化
    門脈を経て肝臓
    気管を経て咽頭・食道を通過
    空腸で成虫になる
    ・ascaris pneumonia(回虫性肺炎)
    回虫が肺で発育する際にみられる肺炎様症状で、咳・気管支喘息・呼吸困難・X線で両肺野に浸潤像がみられる。
  4. 迷入による症状
    • 胆管・膵管・虫垂への侵入
    • 肝侵入による肝膿瘍
    • 腸穿孔による腹膜炎
    いずれも急性腹症を引き起こす。

第5回 蟯虫・鉤虫・鞭虫

■蟯虫

  1. 学名:Enterobius vermicularis
    • 生活史
      幼虫保有卵を経口摂取
      十二指腸で孵化し、2回脱皮を行った後盲腸へ移動
      雌は夜間肛門から出て、周囲の皮膚に産卵
    • 病害
      数が少ないときはほとんど無症状であるが、多くなると下痢・腹痛を起こす。幼児では神経症(不機嫌・不眠)、発育不良、会陰部の糜爛(びらん)・湿疹などを起こす。他に虫垂炎・潰瘍・膿瘍・肉芽種・腹膜炎・女性では大網腫瘤・膀胱炎を起こす。

■鉤虫・鞭虫

  1. 学名と和名
    学名 和名
    Ancylostoma duodenale ズビニ鉤虫
    Necator americanus アメリカ鉤虫
  2. 2種の成虫および幼虫での鑑別点
    成虫
    鑑別点 ズビニ鉤虫 アメリカ鉤虫
    死後硬直 背方にそれ返り、C字形 腹方にそれ返り、口は
    背方に向かって開く。
    乙字形またはΩ型
    頭部 2対の歯芽を持つ 歯板を持つ
    交接嚢 交接刺の先端が針状 背肋が2つに分かれている
    陰門 中央より下 中央より上
    頚部乳頭 円錐状で先端が鈍円 円錐状で先端が尖っている
    幼虫
    鑑別点 ズビニ鉤虫 アメリカ鉤虫
    体形 細長い 太く短い
    頭部 裁断状 丸く槍型構造が明瞭
    尾部 徐々に細くなり、先端はやや鈍い 急に細くなり、先端は鋭い
    横紋理 あり なし
    生殖器原基 腸管の真ん中よりやや後方 腸管の真ん中よりやや前方
  3. 発育史
    幼虫保有卵が土壌の土などで孵化し、
    第1期幼虫(ラブジチス型幼虫)となる
    脱皮をして第2期幼虫(フィラリア型幼虫)となる
    やがて体表角皮下に第3期幼虫を生じる(感染幼虫・被鞘幼虫)
    ↓経口感染(ズビニ鉤虫のみ) ↓経皮感染
    胃・小腸上部で鞘が破れ、
    第3期幼虫が現れる
    血流またはリンパ流に乗って
    肺に移行し第3期幼虫が現れる
    小腸粘膜に侵入し、脱皮を
    行い、第4期幼虫となる
    ←────
    (ズビニ鉤虫)
    気管・食道・胃を経て
    小腸に移行する
    ↓(アメリカ鉤虫)
    小腸腔に現れ、脱皮を
    して第5期幼虫となる
    脱皮して第4・5期幼虫になるが、
    小腸粘膜に侵入しない
    成熟して成虫となる
  4. 各期の病変
    • 感染幼虫の経皮侵入→点状皮膚炎
    • 感染幼虫の経口侵入→若菜病
    • 成虫の消化管内寄生→鉤虫性貧血・異食症
  5. 回虫・鞭虫は濾紙培養法で検出できない。外界で卵が発育できないためである。

■好酸球増加症

  • 増加がみられる…原虫、蟯虫、糸状虫類
  • 増加がみられない…回虫、イヌ回虫、アニサキス、鉤虫、広東住血線虫、顎口虫類

■イヌ糸状虫

  • 媒介者(中間宿主)は、蚊(イエカ・ヤブカ・ハマダラカ)である。
  • 病原性
    • 肺イヌ糸状虫症
      虫卵・虫体による梗塞、咳、痰、血痰、胸痛、発熱など
    • 肺外イヌ糸状虫症
      皮膚爬行症、腫瘤

第6回 吸虫類

■肝蛭・肝吸虫・横川吸虫

(省略)

■肺吸虫

  1. 虫卵が排出されない場合は、免疫学的診断による
    皮内反応
    虫体抽出抗原液を皮内に注射し、15分後に膨隆の大きさを測定する。陰性であれば、肺吸虫感染をほぼ確実に否定できるが、陽性の時は直ちに感染していると断定することはできない。
    ouchterlony法
    被検血清と各種寄生虫抗原によって形成される沈降線によって診断するもので、IgGとIgM抗体を検出する。
  2. 肺吸虫のヒトへの感染経路

    第2中間宿主体内のメタセルカリアの経口摂取による。日本での主な感染 源はモクズガニであるが、イノシシの肉の生食によっての感染も起こって いる。

■住血吸虫

  1. 学名
    日本住血吸虫 Schistosoma japonicum
    マンソン住血吸虫 Schistosoma mansoni
    ビルハルツ住血吸虫 Schistosoma haematobium
  2. 発育史

    ▼日本住血吸虫・マンソン住血吸虫

    外界に出た虫卵は水中で孵化し、
    ミラシジウムは中間宿主の貝に経皮的に侵入
    スポロシスト・娘スポロシスト・セルカリアの
    順に発育する(レジアの時期はない)
    セルカリアは水中に遊出し、
    ヒトなどの終宿主に経皮的に侵入
    血流に乗り、腸管膜動脈末端から
    門脈枝に移行し、 成虫に発育する
    雌雄抱合したまま血管を遡行し、
    細血管にいたり産卵する
    虫卵は血管を塞栓し、周囲の組織を壊死させ、
    虫卵は腸管腔に脱落し外界に出る。

    ▼ビルハルツ住血吸虫

    寄生部位が膀胱および肛門付近の静脈叢の血管であることを除き、日本住血吸虫 の発育史と同様である。
  3. 感染経路
    全てセルカリアの経皮侵入による

第7回 条虫類

■人に寄生する各種条虫の感染経路

種類 感染経路
広節裂頭条虫 第2中間宿主(サクラマスなど)のプレロセルコイドの生食
大複殖門条虫 海産物の生食
マンソン孤虫 プロセルコイドを持つケンミジンコ(第1中間宿主)の生食
プレロセルコイドを持つヘビ・トリ・カエルなど(第2中間宿主・待機宿主)の肉の刺身
無鉤条虫 無鉤嚢尾虫を持つ牛肉の生食
有鉤条虫 有鉤嚢虫を持つ豚肉の生食
単包条虫
多包条虫
終宿主の糞便中の虫卵の経口摂取
小形条虫 ヒトまたはネズミの糞便中の虫卵の経口摂取
縮小条虫 擬嚢尾虫を持ったコクヌストモドキなど穀類につく昆虫の経口摂取
瓜実条虫 擬嚢尾虫を持ったイヌノミ・ネコノミの経口摂取

■各種条虫症の診断法とその理由

種類 診断法とその理由
広節裂頭条虫 自然排出した虫体と糞便中の虫卵の検査
(肛門から長い虫体が懸垂する)
大複殖門条虫 自然排出した虫体と糞便中の虫卵の検査
マンソン孤虫 遊走性限局性皮膚腫脹ないし腫瘤
(幼虫は皮下組織に寄生することが多い)
好酸球増加、IgEの上昇、Ouchterlony法、免疫電気泳動法
無鉤条虫 体節の自然排出と肛囲検査
(体節は1個ずつ分離している、肛門通過時に虫卵が付着する、
子宮の分枝が20以上)
有鉤条虫 自然排出した体節の検査
(無鉤条虫の体節より薄く、運動不活発、子宮の分枝が少ない)
単包虫症
多包虫症
問診によって流行地に旅行したか調べる。
X線、CT、超音波エコー(嚢腫)
皮内反応、ELISA法などの抗体検査
小形条虫 糞便中の特有な虫卵を検出する
(幼虫被殻の両端に突起)
縮小条虫 糞便中の虫卵を検出する
(小形条虫より大きく、球形)
瓜実条虫 糞便中の片節や卵嚢、虫卵を検出する
(片節は自然排出する)

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